制作過程
Bunkamuraイバラード展で制作




第1日目(2001.08.28)
最初は、いろんな色のしぶきをかけて色の入り混じった模様から始まる。 それはまるでサム・フランシスかのような抽象画の美しい作品だ。 これが下地となる。井上先生の常識・・・その1、絵を描く時は左手、サインは右手。 時々、絵を逆さにすることがある。それは、アクリル絵の具が水性のため、下に垂れるので それを防ぎ、しかもいろんな方向に模様が片寄らないようにと言うこともあるらしい。

第2日目(2001.08.29)
入り混じった模様を眺めているうちに、次第に建物の像が浮かび上がってくる。 この風景は、ホテルからの途上で朝、見掛ける洒落たビストロになって来たようである。 しかも、その様子は、かつての回廊にも似ている。久々に画廊に展示されたのが影響を与えたようだ。 大作の回廊
時々、椅子から立ち上がり、後すざりして絵の全体を眺めて構図を確認する。全体のバランスは、 キャンパスから少し離れて見ないとわかりにくい。

第3日目(2001.08.30)
さらに形がはっきりしてきた。そして、さまざまな色が加わって来た。 テーブルや看板、雲が描かれた。

第4日目(2001.08.31)
雲の中からラピュタのような雲?が出現。これはさらにラピュタとしてはっきっり描かれるのだろうか? 入り口が水没し、水の打ち寄せるレストランになった。草が生えていることから淡水と思われる。 草や小石が描きこまれ、これまでの大きなタッチから細かいタッチへと変化してきた。 色合いも全体的に濃ゆめになった。残る関心は空と人物をどう入れていくか・・・。 それと建物の上部をどうするか・・・と言ったところだろうか?

第5日目(2001.09.01)
きょうから、全体をさらに細かく描くことに集中された。 一見、あまり変わっていないようにも見えるが・・・変化したところは、雲を立体的にし、手前をもっと水らしく、入り口周辺の草や花を増やしさらに 描写を進め、右の窓から室内が見えるようになり、柱の形状がさらにきっちり描かれた。
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第6日目(2001.09.02)
さらに草花が緻密に描き加えられた。ラピュタがそれらしくなり、雲が拡大写真でわかるように建造物のように変わった。 テーブルの下の部分、メニューがさらに細かく加筆、右手の窓にガラスがはめ込まれたようである。 テーブルの数と奥の柱の数が増えて、さらに部屋の奥行きが出てきた。柱の美しい鉱石もはっきりしてきた。 中央部の青みは、撮影のせいだと思われる。
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第7日目(2001.09.03)
大変な事が起きた。 水だと思っていたところに道ができた。 海からのお客様をお迎えするのだろうか? 上部には手すりのような構造になった。 遥か向こうに見えるのは、町並みのようでもある。
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第8日目(2001.09.04)

きょうも細密な描写をさらに重ねられた。 ラピュタをはっきりと、草花を増やし、テーブルの下の輝きやメニューなど、入り口付近の描写をさらに細やかに描き込まれた。 入り口上部もさらに加筆されて完成度もより高くなった。 いったん、このあたりで筆を置き、人物の配置についてしばらく検討されることになりそうだ。 明日、人物が入ることはなさそうだ。(ーー)残念。
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これまで毎日、キャンパスに向かわれる姿を見続けてきたが、ここまで執拗に細かい筆で描写を重ねていかれることに驚いた。 しかも、まったくモデルはない。すべて画廊の椅子にすわったまま、まるで念仏を唱えるようにこつこつと筆が動き続けるのだった。

第9日目(2001.09.05)
より密度が濃くなった。全体的に各部に影を加え、形をはっきりとさせた。 例えば、草むらの影やメニュー、店内など、とくに外壁の鉱石をはっきりした形にした。 今日で、会場での制作は終了した。緻密に描き込まれたのでしばらくこのまま放置されることになるだろう。 この作品は、しばらく東京出張所(アートスペース)の方でご覧になれるようにする予定だ。 井上先生、会場での制作お疲れさまでした。外野からの雑言に耳をお貸しいただき ありがとうございました。制作がこんなにも緻密に丁寧に描きこまれていくなんて、改めて驚いた次第です。
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そして、その後の経過はこうなっている。